分岐点

病院の待合室で、咳き込みそうになるのを必死に抑える。

咳がとまらなくなることを考慮して、わざとひんやりとしたトイレに続く廊下へ出る。

名前が呼ばれるまでじっと待つ。

もうヒーターは私の身体を壊す機械でしかないようだ。

考えれば我が家には、ヒーターは客間にしかなく、家族が使うことは全くない。

自室では湯たんぽだけで生きていて、多少の寒さを感じても健康を損なうことはあまりない。

 

本を片手に、イヤフォンを片耳にしてぼんやりと待ち続ける。

診察で、先生から休みをしばらくとるか、仕事をこれを機に辞めたほうがいいと言われた。

あぁ、自分を大事にしなさいということか、と思い病院終わりにすぐに上司にその旨を相談した。

きっと、言ってもわかってもらえない。と思っているから言えなかった。

病気とはそんなものだ、きっと大病とわかりやすい病名じゃないといけないという遠慮がある。

結果、休みを3日もらい、あとはまた考えようと思っている。

今は、声がでるまでに回復することが最優先にしよう。

 

辞めたほうがいいと言われ、「札幌に住めばいいよ。」と言われた彼の言葉が頭をよぎった。

誰も知り合いがいない遠い地に住む、自分がしたいことだけの経済力があればいい。

どうなるかはわからないけど、あぁ、それも悪くないなぁ。となんだかそう思えた。

「友達がいないから嫌か。」と、そう彼はつけたしたけど。

私は、音楽をもっと勉強できる環境で、仕事をしながら1人ぼんやり生きていても苦にはならないし。

彼が思うほど、社交性がないわけじゃない。

無理にはつくらない、ただお互いなりたければそうなる。

と、なんだか気楽に思っている。友達も恋人もそういうものだって。

焦って、寂しくて、あわせてつくらなくても、私にはできる気さえする、不思議な心境。